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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (70)
経済小説
2011年2月26日 07:00

こうして民事再生の申立に向けて、巨大な歯車が音を立てて回り始めた... 山陽監査法人に対しては、各取締役に黒田会長が考えを伝えたその数日後に、私から民事再生法の準備に入ることを伝えた。山陽監査法人は10月下旬から中間決算の監査に入ろうとしているところであったが、そのような状況であるため淡々と経理処理面のチェックのみをしていただくようにお願いした。民事再生を前にしてなるべく財務諸表をきれいな状態にしておけば、それで足りると考えたからである。

 10月末には申立代理人弁護士も決まった。安田先生の紹介で、福岡市内では比較的規模が大きく倒産法に強い弁護士事務所の土井先生と、そして担当の森永先生にお願いした。さらに安田先生も弁護団に加わってくれた。
 いよいよXデーに裁判所に提出する、分厚いバインダー5冊分の申立資料の作成を始めた。始めるにあたり、管理本部全員で分担しなければならない作業量であったため全員を会議室に集め、これから11月14日のXデーに向けて準備をすることを指示し、それを回避するための最後の努力(指摘整理の折衝)も、会長・社長を中心にいま行なっていることを伝えた。それでも再生法となった場合は、取締役一同が主導して事業の存続を図ることも伝えた。また部外には一切秘密での作業となることを厳命した。
 こうして民事再生の申立に向けて、巨大な歯車が音を立てて回り始めた。

 管理本部の社員の受け止め方は、存外に冷静だった。総務部では、法的整理のリサーチを先に進めていたし、経理部では日々の資金管理を行なっているため、会社にいまいくらの現金があるのか誰でもわかる。それに管理本部の社員は、たぶん私の表情を見て全てを悟っていたのだろうと思う。この点、いくら状況が厳しくとも、それを表情に出すべきではない戦場の指揮官としては、反省させられるところである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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